小技集
これまではプレゼンテーションや顧客説明の中でどんな内容を話すのかについて説明しました。
ここからは 「ケース別」の会話で利用可能な小技を紹介します。
詰められた時のかわし方
ほかの人にボールを預ける「ooさんはどう思います?」
あるプログラムの仕様について問い詰められた時、もし同じ会議に味方がいるのであればそこに一度ボールを渡してしまっていいでしょう。 問い詰める側は一人の人(つまりあなた)に攻撃(圧力)をかけようとしますが、ほかの人にボールを渡すことでプレッシャーを逃がすことで、問い詰める側の攻撃力を下げることができる(と思われます)
あるいは、ボールを受け取ったほかの人が答えている間に、返答をする時間を設けることも可能ですね。
- リーダー「本当にこのモジュールを使用することが正しいと思ってます?」
- あなた「自分は正しい選択だと思います。どうですかね、OOさん?」
- OOさん「う~んそうですね...。自分もこのサービスの利用で間違いないと思いました。」(この間に次のセリフを考える)
- あなた「ですよね。自分もほかのサービスと比べてOOという点が優れていると思いましたしリーダーもその点に同意していたはずです」
このあたりについての具体的な根拠を出すことはできなかったのですが、自分の経験上これはかなり使えます。
虐待は受けるだけでなく見るだけでもダメージがあるので、遠慮なく助けを求めて良い
両親間のDVに曝された子どもがさまざまな精神症状を呈し、DV以外の被虐待児に比べてトラウマ反応が生じやすいことがこれまで報告されている
図4 高解像度MRI画像(Voxel-based morphometry)による、小児期に両親間の家庭内暴力(DV)を目撃した若年成人群(23名)と健常対照群(22名)との脳皮質容積の比較検討。DV目撃群では右舌状回の容積が6.1%も有意に減少していた。(カラーバーはT値を示す。)
from https://scienceportal.jst.go.jp/explore/opinion/20130701_01/
上記の研究結果からわかる通り、虐待(ある人間への攻撃)は受けるだけでなく見るだけでも悪影響を及ぼします。(ソースは忘れましたが、直接虐待を受けるよりも虐待を目撃する方が脳へのダメージが大きいという研究結果もあります)
上司からの圧力を一点に受けている場合、その攻撃をほかの人に肩代わりしてもらうことは助ける側にとっても損ではないのです。
感情的な人には、聞こえないふりをしてもう一度しゃべってもらう「すみません。音声が少し乱れちゃって...」
これはリモートワークをしているときに使える手口です。
あるプログラムの仕様について問い詰められた時、もしそれがリモート会議であれば、聞こえていないふりをするのも一つの手でしょう。 これは特に、感情的になっている人に有効で、ポイントは可能な限り冷静に、そして丁寧に話すという点が大事です。
また、大きく時間を稼げるのも一つの良い点でしょう。
- リーダー「本当にこのモジュールを使用することが正しいと思ってます?」
- あなた「...」(この間に考えておく...)
- リーダー「(あれ...?)ooさん...?」
- あなた「もしもし..?ああ、すみません。少し音声がみだれてよく聞こえなかったのですが...?大変申し訳ないのですが、もう一度話してもらってもよろしいでしょうか?
- リーダー「ああ...はい..。えっと... このモジュールを使用した理由があるのかなと気になりまして...」(ここで次話す内容を整える)
- あなた「ああ。それはですね。コストの関係で最も安いモジュールがこれだったはずなんですよね...」
ここでのポイントは3つあります。
- 一つは「無言」をうまく利用すること
- 自分が「冷静に」「丁寧に」のお手本を見せること
- 同じ発言を二度してもらうことで、自分の発言を反省してもらうこと
怒る人は怒りたくて怒る
そもそも何か目的を達成するのに感情的にならなければならない理由はどこにもありません。
成功のために与えられたリソースの中でただできることをするだけであり、いわばロボットのような存在と捉えて良いのです。
必要なのはそのことだけなのに、それでも感情が表に出してしまい、メンバーの動きを委縮させてしまう人は、感情を抑える方法を知らないか、怒ることが今後の成長につながると考えているかのどちらかでしょう。
根拠としては、アドラー心理学の中より以下の部分が当てはまると思われます。
漫画でわかる。心療内科より一部お借りしました。
from https://yuk2.net/man/115.html
おかしい内容と思う内容を問いただしたいとき
あえて無言になる(非推奨)
「この内容変だな?」「もう少し深く聞く必要があるけど...相手の口から直接聞きたいなぁ...」というときはあえて無言になるのも一つの手です。 特に、相手の口から真相や本当の理由、動機などを聞かなければならないときに活用できます。
ですが相手の立場からすれば一種の恐怖ですし、あまりうれしそうに使うのは基本的な信頼関係にヒビが入る可能性があるので、多用無用です。
- あなた「このモジュールにある関数すべてreturn 0しか返さないんですが...どういう仕様なのでしょうか?」
- 把握しているプログラマ「えっと...。申し訳ないのですが自分もよくわかんないんですよね...。」
- あなた「...」(辛抱強く、待つ)
- 把握しているプログラマ「...。実は...。このコード自分が書いたものではなくて...。以前担当していたKさんのコードなんです...。」
- あなた「...!なるほどです!それは大変でしたね。Kさんに連絡ができるか試してみます。」
沈黙恐怖症
世の中には、沈黙恐怖症と呼ばれる恐怖症が存在し、その数は年々増えているようです。 詳しい内容は省きますが、要はほとんどの人間はよほど親しくなければ、会話の中での沈黙を嫌う傾向があるということになります。
今回の例ではあえてこちら側から沈黙を作ることで、その空気に耐えかねた話し手が自分から積極的にしゃべるようになります。 当然このようなことを繰り返していれば「あなたは会話の中で恐ろしい沈黙を作り出す人だ」と覚えられ、最終的には
https://www.fearof.net/fear-of-silence-phobia-sedatephobia
わからないこと
「わからない」と答える
まずわからないことはわからないで問題ないです。
「OOまでに調べて共有します」と答える
もし現時点で不明な内容が比較的簡単な内容であり、少ない労力で答えまでたどり着ける場合は、
「今は不明です...ですがooまでに調べて共有することはできます」
と 「期限」をつけて話すことで、上司も安心して行動できます。
- リーダー「このプロジェクト今は致命的なバグがあるんだよね...。原因はわかる?」
- あなた「正直なところを申し上げますと、現時点で原因は不明です。ただおおよそのあたりはついているので明日までには発覚します。」
- リーダー「そうなんですね!であればもう少し待ってみますか!」
上司も「正体不明」が怖い
エンジニアを含めた人間が何に恐れを抱くかといえば「わからない」という状態です。
古代の人々は、洋の東西を問わず、暗闇を怖れた。
得体の知れないものへの不安の根本的な原因の第1は、五感で確認できないことによる。
仮に五感で確認できても、その力が人智をはるかに超えて巨大すぎるものは、やはり不安をもたらす。
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM0909_02.pdf
暗闇や魑魅魍魎だけでなく、感染症を含めた「未知」の脅威に対して、人は恐れを抱いてきました。
そして、この「恐怖」という感情は小脳で判断されており、この小脳というのはいわば動物の本能が働く部位になってます。 恐怖に支配されるということは、行ってしまえば人間の理性が働かず、動物としての本能が命じるがままに動いてしまう状態であり、社会性としては危険な状態と言えます。
ジョゼフ・ルドゥーの研究によると、扁桃体は恐怖や脅威、危険といった記憶を意識下に格納する部位でもあり、戦うか逃げるか反応などの条件性恐怖を司る。ほとんどの脊椎動物には小脳があることから、それらの動物の小脳扁桃は全て同様の働きをしていると考えられる[8]。
from https://ja.wikipedia.org/wiki/恐怖
同様にエンジニアにとっても、どこに発生するかわからない「未知の脅威であるバグ」は恐れを通り越して、敬られる対象でさえあります。 そして恐怖に支配されたエンジニアは人間の脳である大脳で考えることをやめ、小脳の本能に支配され、適切な判断力を失ってしまうのです。